DXが急速に進む中、時折「全社員がプログラミングスキルを身につけるべきだ」という主張を耳にします。
私見を申し上げると、全員がプログラマーになる必要はないと考えます。むしろ、私たちが注目すべきは、その根底にある「論理的思考力」です。
確かに、現代のビジネスパーソンにとって、基本的なITリテラシーは不可欠です。エクセルの基本操作や、データの読み解き方、セキュリティの基礎知識などは、もはや「必須スキル」と言えるでしょう。しかし、それ以上に重要なのは、問題を論理的に分析し、解決策を導き出す能力です。
論理的思考力は、プログラミングスキル以前に必要な、より基礎的な能力です。
なぜなら、論理的思考力は効果的なコミュニケーションの土台となるからです。自分の考えを論理的に言語化し、相手に伝えることができなければ、チームでの協働は困難です。また、上司からの指示を正しく解釈し、適切に行動することもできません。
このコミュニケーション能力があってこそ、初めてプログラミングのような高度なスキルの習得も可能になるのです。プログラミングとは、つまるところコンピュータとの対話です。論理的に考え、それを正確に言語化する能力がなければ、プログラムを書くことはできません。
では、この論理的思考力はどのように育成できるのでしょうか?
その答えは、実は基礎教育、特に「数学」にあると考えます。
数学は単なる計算の学問ではありません。
数学は
- 問題を正確に理解する力
- 仮説を立て、検証する習慣
- 複雑な課題を段階的に解決する手法
- 抽象的な概念を扱う能力
これらを養うための最適な学習内容なのです。
例えば、数学の証明問題。「なぜそうなるのか」を順を追って説明する過程は、ビジネスにおける論理的な提案や企画書作成と本質的に同じです。また、方程式を解く際の「未知数を置く」という考え方は、複雑な業務上の課題を整理する際にも応用できます。
つまり、数学教育を通じて培われる論理的思考力は、効果的なコミュニケーション能力の基礎となり、さらにはIT活用能力の土台となります。プログラミング言語は時代とともに変化しますが、その根底にある論理的思考のフレームワークは普遍的です。
したがって、企業の人材育成において重視すべきは、表面的なITスキルの習得ではなく、論理的思考力を育む基礎教育だと考えます。
デジタル時代を生き抜くために必要なのは、論理的に考え、それを適切に言語化し、問題を解決できる力です。
その意味で、基礎教育、とりわけ数学教育の重要性は、これからますます高まっていくことでしょう。
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