採用活動において適性検査は重要な判断材料の一つです。しかし、数多くの検査が存在する中で「どの検査を選べばよいのか」悩まれる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
さまざまな対策講座をご提供している立場から、適性検査の特徴と選び方のポイントについてご紹介します。
主要な適性検査の特徴と測定できる能力
1. SPIテストセンター:若手向けの検査の王道
最大の特徴:圧倒的な信頼感と替え玉対策
SPIテストセンターは会場受験または監視カメラ付き自宅受験のため、替え玉受験の心配がありません。
また、受験者の能力に応じて問題の難易度が変わる適応型テストを採用しており、人によって出題される問題が異なるため、より正確に能力を測定できます。
測定できる能力
- 基礎的な計算力と論理的思考力
- 問題解決能力
- 学習への取り組み姿勢
こんな企業におすすめ
- 確実性を重視する企業
- 大量採用を行う企業
- 基礎学力を重視するポジション
2. SPI WEBテスティング:地頭の良さを見極める
最大の特徴:短時間での判断力を測定
1問あたりの制限時間が非常に短く設定されており、頭の回転の速さや地頭の良さを測ることができます。問題文から「何を問われているのか」を瞬時に把握し、数字の妥当性を感覚的に判断する能力が求められます。
測定できる能力
- 情報処理速度
- 直感的な判断力
- プレッシャー下での思考力
注意点
- 自宅受験のため替え玉のリスクがある
こんな企業におすすめ
- スピード感を重視する職種
- 営業職やコンサルティング職
- 短時間で判断する必要がある場合
3. 玉手箱・C-GAB:データ処理能力のスペシャリスト
最大の特徴:情報処理能力の測定に特化
図表の読み取りや数値処理に特化した問題構成で、データ処理能力の測定に長けた検査です。現代のデータドリブンな業務環境において、非常に実用的な能力を測定できます。
測定できる能力
- 図表読解力
- 情報整理能力
- 正確性と速度のバランス
形式による違い
- 玉手箱(WEB型):自宅受験、電卓使用可
- C-GAB(テストセンター型):会場受験、電卓使用不可
こんな企業におすすめ
- データ分析を重視する職種
- 金融・コンサルティング業界
- マーケティングやリサーチ職
4. SCOA:基礎学力と真面目さの指標
最大の特徴:反射的回答力と学習習慣の測定
高校レベルまでの基礎学力を幅広く問い、反射的に正答できるかどうかを測定します。SPIより出題範囲が広く、生来の真面目さや学習に対する取り組み姿勢を評価できる特徴があります。
測定できる能力
- 高校レベルの基礎学力
- 学習習慣と継続力
- 真面目さ・勤勉性
- 幅広い知識の定着度
こんな企業におすすめ
- 基礎学力を重視する企業
- 真面目で継続的な努力ができる人材を求める職種
- 製造業や公的機関
5. NMAT:管理職候補者向けの実務的判断力検査
最大の特徴:実務に直結する判断力測定
NMATは中堅社員・管理職候補者向けに開発された適性検査です。単純な計算力や知識ではなく、実際のビジネスシーンで求められる複合的な判断力を測定します。推論問題を中心とした構成で、管理職として必要な「情報を整理し、論理的に結論を導く能力」を評価できる検査です。
測定できる能力
- 論理的思考力
- 複雑な情報の整理・分析能力
- 実務レベルでの問題解決力
- マネジメントに必要な判断力
こんな企業におすすめ
- 管理職・幹部候補生の選抜
- 昇進・昇格試験
- より高度な判断力が求められるポジション
6. GMAP-CT:分析力・思考力が必要な業務をする人の選抜に最適な検査
最大の特徴:純粋な思考力の測定
GMAP-CTは思考力重視の検査で、付け焼刃では対応できない純粋な思考力そのものを測定します。コンサルティングファームなどの高度な能力を要求する企業では新卒採用にも使われています。
データ理解、論理構造把握、論証能力など、ビジネスで求められる思考力を6つの分野から総合的に評価します。
測定できる能力
- クリティカルシンキング
- データに基づく意思決定力
- 複雑な論理構造の理解力
- 仮説構築・検証能力
- 戦略的思考力
こんな企業におすすめ
- コンサルティングファーム
- 管理者候補の選定
7. GAB:総合適性検査
最大の特徴:言語・計数・性格を総合評価
GAB(ペーパーテスト)は転職者や正社員登用に多用される総合適性検査です。言語理解、計数理解、パーソナリティを一度に測定でき、幅広い能力を効率的に評価できます。
こんな企業におすすめ
- 転職者の選考
- 正社員登用試験
- 総合的な能力評価を重視する企業
企業の目的別おすすめ検査
【基礎学力重視】
SPIテストセンター → SPI WEBテスティング → SCOA
【情報処理能力重視】
玉手箱・C-GAB → GMAP-CT → SPIテストセンター
【信頼性・確実性重視】
SPIテストセンター → C-GAB → NMAT
【スピード・地頭力重視】
SPI WEBテスティング → 玉手箱 → SPIテストセンター
【管理職・幹部候補重視】
GMAP-CT → NMAT → C-GAB
【戦略的思考力重視】
GMAP-CT → NMAT → 玉手箱(図表読み取り)
まとめ:適性検査選択の基本方針
- 測定したい能力を明確化:求める人材像と検査の特徴を照らし合わせる
- 複数の評価軸を組み合わせ:適性検査は判断材料の一つとして活用
- 受験者の対策前提で判断:対策状況も含めて総合的に評価
適性検査は「完璧な人材を見つける魔法のツール」ではありません。しかし、各検査の特徴を理解し、自社の求める人材像と照らし合わせて選択することで、採用活動の精度を大きく向上させることができます。
まずは自社で「どのような能力を重視するのか」を明確にし、その上で最適な検査を選択しましょう。

2003年からパソコン指導、2011年から大人向け算数・数学教室「大人塾」を運営。これまで1万人以上にカリキュラムを提供し、企業向けEラーニングも展開。
「学習者中心主義」をモットーに、解説→問題の個別学習で「取り残されない学び」を提供。できない人もできる人も自分のペースで学習できる環境づくりに取り組んでいる。
主な著書
- 『コレ解ける? 数字がこわくなくなる おとな算数ゆるトレ』(インプレス・2025年)
- 『史上最強のNMAT・JMATよくでる問題集』(ナツメ社・2017年)
Web担当者Forumでの連載「数字が苦手なWebマーケター向け算数基礎講座」は累計300万PV突破。